第1回 信州編 水の声に耳を傾けて ロケーション日記

2003年10月1日 日本の原風景、水と暮らしの関わりを求め、撮影隊は第一回の撮影を敢行しました。(長野県 木曾郡・妻籠宿・飯田市・松本市・白馬村・上田市)

長野県 木曾郡・妻籠宿・飯田市・松本市・白馬村・上田市

10月1日 妻籠村

妻籠宿の村の人

妻籠宿の村の人


妻籠宿辰巳屋の藤原長司さん

妻籠宿辰巳屋の藤原長司さん


男滝、女滝の看板

男滝、女滝の看板


木曽男滝

木曽男滝


重要伝統的建造物群保存地区に指定される長野県南木曾の妻籠村。江戸時代から綿々と続く暮らしを守りながら、宿場の景観を今に伝える山間の静かな村です。


街道に沿って立ち並ぶ家々。民家あり、商家あり、旅籠あり、往時の家並みがそのまま保存されています。しかも、いまも人々が暮らしを営む生きた村でもあるのです。ここでは、木曾山系を流れてきた湧き水が、長い間生活用水として使われてきました。家々を潤すように、水は蕩々と湧き出しています。


村の人はみなこの村に大きな誇りを持っています。夕刻が近づくと、村の清掃に出てくる人をたくさん見かけます。村には、ゴミひとつ落ちていません。そばを流れる川の水で道をきれいにしていたおじさんは、こんなふうに語っていました。


「どうしてこの頃の人はペットボトルをぶらさげて歩くんだろうね?で、飲み終わったら捨てていくんだよね。」


妻籠宿で、元気なおじいさんに出会いました。藤原長司さんです。元日本軍のパイロットだったというおじいさんは、現在辰巳屋という旅籠の7代目として静かに余生を送られています。短歌が趣味というおじいさんは、長野朝日歌壇の会員です。過去、朝日新聞や朝日グラフに紹介されたこんな短歌があります。藤原さんのお気に入りの短歌のひとつだそうです。


「生水を飲めるは国の力なり 羨みてみる外つ国の人」


外国からのお客さんも多い辰巳屋さん。訪れた外国人が、ここの水のおいしさに驚く様子をみて、この短歌をつくったそうです。ここの水は誇りだと藤原さんは言います。この水を守れることこそ国の力なんだ・・おじいさんの言葉には説得力がありました。


妻籠宿から程近い山間にある男滝、女滝。(写真は男滝)安藤広重の画=十返舎一九の道中記などにも紹介される名所です。また、吉川英治の『宮本武蔵』に登場する、武蔵とお通が出会った「男垂の滝」はこの滝です。ここには、御嶽大権現と不動明王が祀られる滝不動があり、願をかければ叶わぬ恋も結ばれるという言い伝えがあります。


10月2日 安曇野(あずみの)

白馬の旧家

白馬の旧家


白馬連山

白馬連山


姫川源流


わさび農園水車


わさび農園畑


北アルプスの山麓に広がる安曇野・・。
のどかな田園風景、天を突き刺すかのような急峻な峰々。
豊かな自然の恵みに包まれた山里。
そして、雪解け水を運ぶ美しい清流。
そこは、日本人の心の故郷です。
安曇野は、国土庁から「水の郷」として認定されています。


姫川の源流

険しい山間を削り取るように流れ日本海に注ぐ一級河川=「姫川」。その流れは幾度も氾濫を繰り返し、古くから「暴れ川」の異名を持つ川として知られています。また、「姫川」の語源は、古事記に登場する糸魚川のヒスイの権を司った女王=奴奈川姫であるといわれています。


姫川源流湧泉は、1985年に環境庁から「名水百選」に認定されました。選定の理由は、一級河川の源流でありながら簡単にすぐ近くまで行けるのは稀であること-。そして、優良で特異な水環境であることがあげられます。


姫川の源流湧泉へは、国道148号線から徒歩わずか5分-。壮大な水の営みを手軽にかいま見れる、全国的に希有な場所といえます。普通、河川の源流つまり水源はひとつのように思われますが、姫川源流湧泉には東流、南流、西流の3つの水源があります。3つの水源はそれぞれ数十メートルしか離れていませんが、水温、水質はそれぞれに大きく異なります。つまり、それぞれに違った水流を持つことを表しています。ここは、美しい水生生物が見られる場所としても有名です。


大王わさび農場

わさびは澄み切った清流に成育する植物です。ここ大王わさび農場を全国的に知らしめたのは、黒澤明監督の映画『夢』でしょう。


「夢には、人間の心に眠っている、あるいは、隠れたり抑えられたりしている色々な気持ちが正直にあらわれるものだ。そして夢は、それを驚くほど自由奔放な形で見事に表現してくれる。私はこの映画で、この夢というものに挑戦してみたのだ。」


黒澤監督は、映画『夢』に寄せてこんな言葉を残しています。


1989年5月、ここ大農場のわきを流れる万水川で、映画『夢』第六話「水車のある村」が撮影されました。黒澤監督が『夢』の舞台として、全国各地の中から選んだのが安曇野の自然だったのです。


10月2日 上田市

上田市

上田市


旧西塩田小学校(廃校)


ゆったりとした千曲川の流れに沿って広がる上田市。千曲川の美しい水辺の風景の中に、信濃国分寺跡や鎌倉時代の文化残る塩田平、別所温泉など見所もたくさんあります。意外と知られていないことですが、上田市は古くて新しいまちとして、映画製作のロケ地としても人気があります。


上田市立旧西塩田小学校

大正時代の木造建築の小学校。1996年3月に最後の卒業生を送り出して以来廃校となっています。ここは、映画『学校の怪談』の舞台となった場所です。現在保存運動が推進されています。


屋根瓦に『水』という漢字が刻まれています。これは、『水神』の加護により、建物を火災から守るためといわれています。


10月4日 松本市

松本市内

松本市内


松本市内涌き水

松本市内涌き水


かつては松本城を守った女鳥羽川の流れ。その美しさは、全国的に有名です。


繁華街のすぐ下を大きな真鯉が悠然と泳ぐ姿は、この町の豊かさを象徴するかのようです。また、町の到る所に湧き出る水は、いまも城下町に暮らす人々の日々を支えています。


有名な湧き水「源智の井戸」には、水を汲み取りにくる市民が後を絶ちません。古くから知られたこの井戸は、中世以来この地に居を構えていた河辺与三右衛門源智の名を取ったと伝えられます。


松本市の重要文化財であり、その水のおいしさは折り紙つきです。明治天皇が立ち寄られ、喉を潤された湧き水としても知られています。


10月4日 飯田市

飯田天竜川渓谷

飯田天竜川渓谷


帰路、遠く南アルプスの山々に包まれた飯田市に立ち寄りました。ここは、結納の時などには欠かせない「水引」づくりで有名なところです。


飛鳥時代に遣隋使=小野妹子が帰朝の際、隋の答礼使が携えてきた朝廷への贈り物に紅白の麻紐が結ばれていました。この時から朝廷への献上品は、紅白の紐で結ぶのが慣例となったそうです。こより状にした和紙を水と糊で固めたことから「水引」と呼ばれるようになったといわれています。また、平安時代に宮中の女官たちが文献を束ねるのに細い和紙の紐を用い、繊細な紐の姿がまるで水が流れるようだったことから「水引」と呼ばれるようになった、というロマンチックな説もあります。


飯田市はまた、豪快な天竜川下りでも有名です。


追記

次回の撮影は11月中旬から下旬にかけて、美しい紅葉と水の風景を探し求めます。『水の声に耳を傾けて』撮影日記はこれからも続きます。
どうぞご期待ください。


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